Ser.2-1「もっと話したくなる人」が、組織のマネジメントを強くする

〜テーマ:『自分の話し方、聞き方が相手に与える印象』(第1回目)〜

新しいシリーズ、3回にわたってお届けします。

話をしても長く続かない人や、必要最低限のことさえ話す気になれない人がいる一方で、必要な用件が済んだ後でももっと長く話していたい人や、特にこれといった用事がなくても言葉を交わしたくなる人がいます。この違いは、一体どこから生まれるのでしょうか。

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「黒野主任と話していると疲れるんです」

「黒野主任と話していると、すごく疲れるんです。続かない会話を、なんとか繋ぐようにこちらが努力しなくちゃいけなくて……」

そうため息をつくのは、看護師の茶畑さん。病棟では中堅どころで、他のスタッフからの信頼も厚いと評判のナースです。今日は個人的な悩みというよりも、病棟のスタッフを代表するような形で相談室へやってきました。

「先輩に対してこんなことを言うのは失礼だと思うんですけど……。黒野主任は、人と話をしているときに相手の目を見るどころか、身体を向けることさえしません。相槌を打つこともなく、表情もあまり変わらないので、本当に話を聞いてくれているのか不安になるんです」

茶畑さんは、コミュニケーションにおいて大切なポイントをしっかり押さえながら、それらが黒野主任に欠けていることを的確に指摘しました。そこで、私は少し角度を変えて質問をしてみました。

「もし、仲の良いお友達が同じような態度だったら、茶畑さんはそのお友達になんて言いますか?」

「えっ! ああ、そうですね……。『ねえねえ、私の話、聞いてる?』とか、『私が話しているんだから、こっち向いてよ』って感じですかね。それから、黒野主任は私が話し終わっても、しばらくじっと黙ったままなので、理解してくれたのか、どう受け止めたのかが分からないんです。『聞こえてるなら、何か言ってよ!』って叫びたい気分になります」

「話しにくいリーダー」が、気づかぬうちに組織の負担を偏らせる

最初はやや歯切れが悪かった茶畑さんでしたが、話し始めて勢いがついたのか、さらに言葉を続けます。

「みんな、相談したいことがあると、赤坂さんのところに行くんですよ。黒野主任には話しにくいから。赤坂さんは黒野主任とキャリアが1年しか違わない先輩ですけど、このままじゃ赤坂さんにばかり負担がかかってしまいます。それに、黒野主任もますます周囲から信頼されなくなっていく。どちらの立場を見ても、すごく気の毒だと思うんです」

茶畑さんの訴えは、単に「黒野さんとのコミュニケーションがとりづらい」という個人の不満に留まりませんでした。

病棟スタッフの業務管理や相談を受けるべき立場にある黒野主任が、その役割を果たせていないこと。そして、その役割の重荷がもう一人の先輩・赤坂さんに集中していること。

つまり、病棟という組織の中で「役割のアンバランス」が起こっているという指摘でした。

これは、医療・介護の現場に限らず、一般企業の組織でもよく起こる現象です。一人のコミュニケーションの癖が、巡り巡って周囲の業務負担の偏りを生み、組織の健全性を損なってしまう。これはもう、「あの人はそういう個性だから」と見過ごしていいレベルではないのです。

自分の「特徴」に気づいていないだけ?

以前、院内でコミュニケーションスキルの研修を行ったときのことです。参加者にこんな質問をしてみました。

「相手の話を聞くとき、あなたがどんな工夫をしたら、相手は『話しやすい』と感じるでしょうか?」

それぞれ紙に書いてもらったところ、参加者の大半が「相手の目を見ること」「相槌を打つこと」「共感を示すこと」と回答しました。

茶畑さんの相談を受けながら、私はふとその研修のことを思い出していました。 そして、いくつかの疑問が私の中に湧いてきたのです。

  • 頭ではわかっていても、「自分自身はできていない」ということに、単に気づいていないだけではないだろうか?
  • 本人に悪意も故意もないのに、周囲から「話しづらい人」と思われているのだとしたら、それこそが本人にとって一番気の毒なことではないだろうか?
  • 自分の「誤解されやすい癖」に気づき、意識してそれを修正できれば、人間関係も組織の空気も変わっていくのではないだろうか?

その後、以前に私からの提案で作っていただいたある「仕組み」が功を奏して、私は黒野主任と直接お話しするチャンスを得ることができました。そのチャンスを活かして、私の中で湧いたこれらの疑問を、ひとつずつ紐解いていくことになります。

その時のお話は、また次回の連載でお届けします。

あなたの周りに、あるいはあなた自身の中にも「悪気はないのに誤解されやすい癖」がある……かもしれません。もちろん、私にも……(冷や汗)。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。次回もお楽しみに!

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