Ser.4-2 言葉は「中身」より「ラッピング」

 〜テーマ:「誤解されやすい人」(第2回)〜

前回は、「なぜか相手を怒らせてしまった……」というケースを取り上げました。 患者さんに一生懸命、術後の自己管理を説明していたとき、「他の看護師さんを呼んでくれ!」と言われてしまい、大きなショックを受けた青田さん。

※ここで少し、前回お伝えした「自分の言動の影響に気づきにくい2つのタイプ」(私の臨床的な印象です)を振り返っておきますね。

  • タイプ①:状況や文脈の「捉え方」に固有の特徴がある場合 言葉や社会的ルールそのものの受け止め方が独特で、説明されても「なぜそれが相手にとって不快になるのか」がピンと来にくい状態です。ここには「良い・悪い」という評価はなく、ものごとの捉え方の特性(個性)の違いと言えます。
  • タイプ②:「いまの自分の状態」を客観視しにくい場合 知識としては分かっていても、「まさに今、自分がその状態になっていること」にリアルタイムで気づくことが難しい状態です。余裕がなくなっている時など、誰にでも起こり得る「一時的な視野狭窄」のような状態とも言えます。

青田さんは後者のタイプ②でした。
さて、あの後どんな作戦会議になったのでしょう。青田さんと「話し言葉」について、一緒に考える時間を持ちました。

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■ 一生懸命に説明した、でも伝わらなかった

「青田さんは一生懸命に、熱意を持って患者さんに説明したと言っていましたね。でも、もしかしたらその患者さんは、さきほど私が体験したように、青田さんの話す『内容』が正しいことはわかっていても、その『話し方や態度』を威圧的に感じて、次第に話を聞く気になれなくなっていったのかもしれませんね」

青田さんが私の言葉を落ち着いて受け止めてくれているのが分かったので、あらためて丁寧な言葉で整理して伝えました。 青田さんはじっと耳を澄ませてしばらく考え込み、ぽつりと呟きました。

「患者さんのためだと思ったのですが、伝わらなかった……。結局、患者さんのためにならなかった……」

「青田さんの『第一の目的』を果たすことができなかったのですね」

「そうなんです。自分の一番果たしたかった目的が、自分の話し方のせいで……。もう、いい加減にどうにかしなくちゃ、自分の癖!」

次期主任との声もあがるほど、医学的な理解や判断の正確さ、処置のスキルには定評のある青田さん。努力して様々なものを積み上げてきたからこそ、今回のように「努力の方向性が違っていたこと」への気づきと悔しさが、私にもひしひしと伝わってきました。

■ 話し言葉には「感情」がのる

このエピソードには、話し言葉の大きな特徴が現れています。 話し言葉には、意味を伝える「言語的要素」と、声のトーン、抑揚、強弱、速さといった「非言語的要素」が含まれています。そして実は、この非言語的要素こそが、言葉の意味以上に大量の情報を相手に届けているのです。

「声に感情がのる仕組み」をイメージしてみると、わかりやすいかもしれません。 声が「音」として相手に届くまでには、肺から押し出された空気が、喉にある声帯を震わせながら外へと出ていきます。この声帯は、身体や感情の変化にとても敏感な器官です。そのため、そこを通って生み出される話し言葉は、必然的に「話の内容(文字データ)」だけを単体で相手に届けることができません。

さらに、話し言葉には声だけでなく、表情や視線、相手との物理的・心理的な距離感など、さまざまな非言語の情報が重なります。

文字にすれば全く同じ言葉であっても、話す人が変われば、あるいは同じ人でもタイミングや感情が変われば、受け取り方はガラリと変わります。相手のそのとき置かれた状態によっても、伝わり方に違いが生まれるのです。そして、私たちが言葉を発するとき、相手の心にまずはじめに届くのは、話の内容そのものよりも、「言葉に乗せられた感情の響き」だと言われています。

たとえば、話の内容が「相手に届けたいプレゼント」だとします。 それを包むラッピングの箱やリボンにあたるのが「感情や態度の要素」です。

最初に手渡されたラッピングから棘(とげ)や威圧感を感じてしまうと、相手はそのプレゼントの箱を開けてみようとすら思えないのかもしれません。

青田さんのこれからの具体的な対策は、次回に続きます。

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